マグネシウム合金の表面処理技術をサポートします

マグネシウム合金は、他の金属と比較して軽量で強度も高く、とりわけ軽量化を進める自動車、スマートフォン、モバイルPCを始めとする用途で注目を集めています。ATCでは、マグネシウムの腐食を防ぐために必要となる表面処理について多くの知見を有し、お客様のニーズに対し確かな技術支援でお応えします。

技術支援可能なマグネシウム材:ダイカスト,AZ91,AM60 ,板材AZ31,切削AZ91,AZ31,Mg-Li合金材

車載の用途例は、車載インパネ裏面フレームなどのマグネシウム表面処理をご覧ください。その他の用途例は、マグネシウム合金の採用事例 をご覧ください。

自動車の放熱  車載用マグネシウムの例 農機具マグネシウム採用例

マグネシウム化成処理ラインナップ

1000時間の塩水噴霧試験後でも良好な状態を維持できる耐食性を強化した高耐食化成処理など、当社のノウ・ハウを有する機能性化成処理の一覧です。アイコンをクリックして詳細をご覧ください。

以下をクリック頂いても詳細をご覧頂けます。

・高耐食性化成処理 マグネシウムの”錆びやすい”を克服! 
・黒色化成処理 塗装レス、下地処理でムラの少ない黒色を実現!
・透明化性処理 マグネの質感を活かす意匠に!
・白色化成処理 より白い下地で塗装の発色を改善!
・表面抵抗値抑制グレード   優れた導通性を実現!
・標準ノンクロム化成処理

大型マグネシウム化成処理槽の一例

 

 

 

 

 

 

マグネシウムの化成処理能力は、槽の大きさ、工程の設定、各工程の処理条件(処理時間、処理製品のサイズ、数量)によって異なります。
また処理槽を大きくすると、薬液槽内の薬液組成の変動が小さくなり、品質(外観、抵抗値など)の信頼性が向上する利点があります。

 

上記大型処理槽の処理能力の一例

1)化成処理の最大可能サイズ:1710L×640W×650H(処理槽のサイズ 2m×1m×1m)
2)最大処理数/バッチの例:一眼レフカメラ筐体 フロント:1,500個 バック:3,000個、車載ディスプレイ バックパネル:300個
3)最大処理バッチ数:平均23バッチ/8時間稼働

マグネシウム化成処理工場 最大規模の化成処理槽

マグネシウム化成処理ラインの一例


塗装不良品の再処理技術もサポートします

塗装/化成処理のトラブル解決、原因解析事例は、こちら↓をご覧ください。

・塗膜密着性(付着性)不良の原因解析
・ボス穴の腐食の原因解析
・塗膜剥離の原因解析
・化成処理材の腐食原因解析

 

課題別対応技術の紹介

1)防錆性、耐塩水噴霧性向上
2)迷彩反射抑制
3)製品チッピング(塗装剥離)時の目隠し
4)異物混入(塗装剥離)防止
5)熱放射性向上 
6)導通,低電気抵抗導電性の確保 
7)意匠性
8)高温高湿試験性能向上

 

技術資料

なぜマグネシウムやアルミニウムに表面処理が必要なのか?

 1)防錆効果

 マグネシウム、ダイカストのアルミニウムは表面が非常に活性であり、錆びやすいため。

 2)塗装下地効果

 塗膜の密着性を高めるため。

より詳しい技術的説明につきましては、下記「マグネシウム表面処理の必要性・有効性」をご参照ください。


マグネシウム表面処理の必要性・有効性

純マグネシウムは、銀白色の軽い金属で、かなりの展延性があり、薄い箔 (はく )や細い針金にすることができます。マグネシウムは、 酸素と結合しやすく、強い 還元作用を持つことから、極めて活性の高い金属です。また、マグネシウムは、水中での金属イオンの溶け出しやすさの指標である標準電極電位が低く(金の標準電極電位が金属中最も高い、安定)、この面でも極めて活性が高く、腐食しやすい金属です。
空気中で放置すると、表面が 酸化され酸化物の薄い被膜ができるので、光沢がしだいに鈍くなり、灰色を帯びます。それが内部を保護することになるので比較的安定であると言われることもありますが、実際の環境は乾燥状態ではなく、水分もあるので、酸化物の薄い皮膜の下に水分が浸透して金属マグネシウムと反応生成物を形成します。これが腐食なので、マグネシウムは、酸化物の薄い皮膜の下に水分が浸透することにより、時間の経過に従って内部まで腐食が進行します。
酸化物の薄い皮膜の形成により、通常の金属マグネシウムは冷水とは反応せず、熱水で初めて反応し、水素を発生しながら溶解します。熱水と同様に、塩水、薄い酸には容易に溶解し、水素を発生します。
このような金属マグネシウムの特性は、合金化されても変わらないので、腐食を防ぎ、塗膜の密着性を確保するために、マグネシウム合金の成形品には表面処理を施す必要があります。https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650854/
に、マグネシウムの耐食性に直接影響をおよぼす表面酸化皮膜の微細構造の解析と成長機構の基礎的解明を行うことを目的とした、小野による研究成果が報告されています。
すなわち、純マグネシウムとマグネシウム合金の自然酸化皮膜、および化成処理、陽極酸化皮膜の成長挙動と生成機構の検討を行った結果、以下の結論が得られたと述べられています。
1) 純マグネシウムの新生面上に大気中で生成した酸化皮膜は、連続的で均一な非晶質の皮膜で、平均厚さは約 23nmであった。 Mottの理論から考えられる値よりかなり厚いのは、膜が理想的な酸化物からずれた水和構造を含むためと考えられる。
2) MgAl合金の場合も、酸化皮膜は非晶質で均一な外観を持つが、含有 Al量の増加に伴って平均膜厚は減少した。 Alの添加による MgAl合金の耐食性の増加は、素地付近における緻密で保護性の高いアルミニウム酸化物割合の増加によると推定される。純水中では水和酸化物 /初期自然酸化膜 /薄片状水和物の 3層構造を持つ皮膜が生成した。保護性の高いアルミニウム酸化物によって、マグネシウム合金素地の水への溶解が抑御されるため、含有 Al量が多いほど薄片状水和物外層の厚さは薄くなった。
3) MgAlZnおよび MgAlRE(RE:希土類元素 )の 3元合金上に生成する水和皮膜も、 MgAlの 2元合金と同様に、 3層構造を持っていた。アルミニウムに加えて、添加元素の亜鉛と希土類元素は、それぞれの酸化皮膜中に取り込まれ、特に表面の不働(動)態性の制御因子である水和を抑制し、内層から水和界面へのマグネシウムの拡散抵抗を高めることによって、湿式環境中での安定性を増大している。皮膜中の痕跡量の希土類元素酸化物の存在が、表面の不働態性の改善、つまり MgAlRE合金の腐食耐性に特に効果的である。合金中で希土類元素がアルミニウムと共存する事が、これらの効果を得るための基本的な因子である。
4) 陽極酸化膜も化成処理膜も、皮膜の成長は、アノード反応による皮膜 /素地界面での MgF2と MgOx(OH)yの生成および溶液中からの NaMgF3と Cr2O3の析出に支配される。ダイカスト合金の場合は相当量の AlOx(OH)yと少量の FeOx(OH)yおよび Mn4+が含まれる。化成処理においては粒界がカソードサイトとして働く。
注1)化成処理皮膜の NaMgF3と Cr2O3の析出は、化成処理薬剤の成分で、弊社ではクロメート Cr2O3は使用していない
注2)リン酸系を使用しており、ノンクロメート処理である
アノード反応、カソードについては、下図を参照
アノードカソード

腐食の電気化学モデル

溶接学会誌 79, p244 (2010)

マグネシウム表面処理の種類

マグネシウム合金の表面処理の手法としては基本的に次の4種類の方法があります。

(1)化成処理: 水溶液中でマグネシウム合金から溶け出す金属イオンと化成処理薬剤との化学反応によって、マグネシウム合金上に不溶性の析出物の皮膜を形成します。
防食性、塗装密着性の他、アース(接地)としての電気伝導性を有する皮膜を形成します。
他の表面処理法にくらべて低コストで信頼性が高いので、ダイカスト品、板のプレス品などに広く適用されています。

(2)陽極酸化処理: 電解質を加えた水溶液中で、金属を陽極として電流を流し、陽極のマグネシウム合金上に酸化被膜を形成します。
アルミニウムのアルマイト処理に相当し、高耐食性、高絶縁性などを付与することができますが、高コストです。陽極酸化皮膜は絶縁性なので、用途に制限があります。

(3)めっき: マグネシウム合金は、添加元素にアルミニウムが含まれていることが多いので、それぞれの金属の特性に合わせた処理工程や処理液が必要で、他の金属のメッキラインと共用できません。
寸法精度、硬さ、耐磨耗性、電気伝導性等を有します。

(4)塗装: 上記の化成処理や陽極酸化処理下地に塗装します。一般的な塗装処理を施すことができますが、成形素材の欠陥をパテ埋め・サンディングなどで処理しなければならない場合が多くあります。塗膜密着性を確保するため、化成処理皮膜と塗料の組み合わせを選ぶことも必要です。プライマーにはエポキシ系塗料、トップコートにはアクリル系塗料が選ばれることが多くあります。

 

マグネシウム合金に関する、より基礎的な情報はこちらを合わせてご覧ください。


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